鉱山・炭鉱等の遺構を利用した集客施設を見る

マインパーク実態レポート

編集部:Mt.1


□編集部からの重大なお知らせ□
 本文中に使用していた画像の一部について、著作者の了承を頂かないまま転載するという当方の間違いがございました。著作者の持元様をはじめ、関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。


●はじめに

 今や、「炭田」や「鉱山」と言われても、ピンとこない日本人が多数派となっている。高度成長期に石炭や鉱石類等のエネルギー資源は、まだまだ自給できる環境にあり、学校教育を通じて、誰でもその存在と国家的必要性を知っていた。
 最盛期、炭鉱も含む鉱山は全国に800カ所以上、このうち金・銀・銅・亜鉛等の金属鉱山は200カ所を数えていた。特に石炭は、明治以降、国内で需給可能な最大のエネルギー資源として、工業社会化に重要な役割を果たしてきた。
 しかし、世界的なエネルギー革命により、主役の座を石油に譲ることとなる。その後、70年代の石油危機を機に、世界的に石炭を見直す気運が高まり、わが国においても、石油代替エネルギーとして、利用の拡大が図られ、供給量は増加し続けている。しかしその内訳を見ると、ほとんど輸入に頼っている(グラフ1)。それは、円高や人件費の高騰などから、資源事業として国産炭は競争力を失ったからである。事実、60年代には600カ所以上あったものが、96年には13カ所と激減している。

 金属鉱山も事情は炭鉱と変わらない。生産量も国内産出が減少し、輸入量が著しく増加している。80年代になると、資源革命とコスト競争から閉山が相次ぎ、21世紀の今、操業中または精錬所として生き残っているのは、30カ所を数えるのみである。
 このようにして、閉山に追い込まれた鉱山・炭鉱のほとんどは廃墟となり、昔日の面影はいずこに、自然への回帰が進んでいる。その中で、約25カ所の鉱山遺産が、“ヤマ”の閉山とともに斜陽化が進んだ地域の再活性の宿願を背負い、観光資源として、一般公開用に整備され、集客施設としてよみがえっている。


 実は、鉱山遺産は、国内だけではなく、世界的にもその保存と活用が叫ばれている。世界中の研究者や行政関係者、市民運動家等が集まり、鉱山遺跡の保存と活用を話し合う「第6回国際鉱山歴史会議」が2003年夏、北海道の旧炭鉱地の空知管内で開催されるという。この会議は、これまでオーストラリア、ドイツ、米国等で開催されてきたが、今回、炭鉱遺産伝承に取り組む空知の自治体の姿勢に共感し、開催が決まった。第6回会議は、約400人が参加し、1週間の期間中は、炭鉱跡地などの視察も予定されている。会議のテーマは、(1)世界各地の鉱山の歴史、(2)炭鉱遺産の保存と活用−などで、参加者が発表と議論を行う。また、世界の産炭地から炭鉱労働者を招き、労働・社会問題を話し合う「分科会」や、空知と各国産炭地の非政府組織(NGO)の交流を図るセッションも企画されている。北海道庁も、炭鉱遺産を観光や社会教育、まちづくりに活かす上で、同会議開催が極めて重要と位置づけ、準備に全面協力する構えである。

 しかしである。鉱山遺構の再生は、そう簡単にはいかないのが現実なのだ。例をあげよう。
 静岡県土肥町の観光鉱山「土肥金山」が、2001年4月2日に開業(1972年)以来の入場者が600万人を突破した。正門で記念セレモニーが行われ、600万人目の入場者に記念品などが贈られた。
 この「土肥金山」は、約400年前に発見され、江戸時代には佐渡金山に次ぐ全国2位の産出量を誇った。昭和40年(1965年)に閉山し、坑道の一部を見学・観光用に整備し、観光施設として早くも昭和47年(1972年)のオープンにこぎつけた。そして、平成元年(1989年)にリニューアルを加え、平成8年(1996年)には砂金採り体験施設も完成させた。さらに平成12年(2000年)には、世界一の200kgの金塊を展示するなど、積極的な誘致策を講じている。
 それでも来場者数は、最盛期の平成4年の年間36万人をピークに、近年は23万人前後に落ち込んでいる。この「土肥金山」は、伊豆半島という首都圏近郊、土肥温泉という観光名所に近いという集客に有利な立地だ。にもかかわらず、苦戦を強いられているのが現状である。

 産業論としては、“重厚長大”は過去のもの、そうした産業の“コメ”であるエネルギー/鉱物資源もまた“減反”が当然等と分析される傾向が強い。しかし、多くの場合、鉱山はその地域コミュニティを成立させた「まち」のコアであった。コアがなくなれば、「まち」も存在しえない。そこで、コアのポテンシャルを再生しようとする。それがこうした地域に共通する悲願なのである。
 そこで、今回から、全国の観光鉱山としてよみがえった「マインパーク」について、その再利用方法、付帯施設、集客実態などを取材し、再生の現況をレポートしていく。



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